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実相寺の言ってたことは本当だったんだなあ

『YoYocHu Sexと代々木忠の世界』(監督:石岡正人)

代々木忠の名前を意識したのは、庵野秀明の発言だったのか、実相寺昭雄の記述だったのか。いまいち記憶が定かではないが、おそらくその名を強く意識したのは、実相寺昭雄が自著「ナメてかかれ!」の中で『いんらんパフォーマンス 恋人』を絶賛したのを読んだときだと思う。
アダルトビデオはそもそも「後に残す」ことを考えて作られるものではない。
次から次へと新作が発売され、ただただ消費されていく。
私が実相寺の文章を読んだ時点で、『恋人』の発売から10年近い月日が過ぎていた。
当然店頭に『恋人』は並んでいるわけがなく、見たいなあと思いつつも、今日まで来てしまった。

今作では、傑作という称号にふさわしいその『恋人』が断片ではあるが見ることが出来る。
結婚を迷うカップルが、別のカップル(女優と男優)と男女を入れ換え、1週間を過ごす。互いの行動はモニター越しにしか見ることが出来ない。
男は、自分の恋人が別の男に抱かれ、なおかつ気持ちよくよがる姿を見ていることしかできない。
アダルトビデオの撮影であるという「虚構」を承知の上で参加しながら、いつの間にか虚構と現実の境目がわからなくなっていく。
とうとう男の方が恋人の部屋に乱入し、男優を恋人から引き離すとき男優が発する「まだ仕事だ!」という言葉が凄い。
というか、ここまで演者を追い詰める代々木忠が怖い!

どこまでも行ってしまう、いや、行かざるを得ない。
撮影対象と、とことんまで向き合い、相手の「本当」をさらけ出させる。
そこに本当の「性」があるのだと信じている。
あまりにも純粋であるが故に、残酷。
黒澤明の粘りやこだわりなんて子供のわがままなんじゃないかと思えるくらいに。

そんな代々木忠は、70歳を超えた今も新作を撮り続けている。
それだって、アダルトDVDショップの棚で、次から次へと入れ替えられる商品のひとつでしかない。
だからこそ、かっこいい。

ちなみに、映画自体の出来は凄く良いとは言えません。
でも、役者が最高ですから、そりゃあいい映画になりますよ。
by isoda8823 | 2011-02-22 15:18 | えいが道 | Comments(0)