2010年 03月 30日
ふしぎ村の物語 その5 絵:イーグル 話:スネーク
みゃーこ先輩は、真っ暗な道を歩いていました。
足元には雑草が繁り、時折、草の先端が足を突き刺します。
こうしてむずがゆい足を引きずって、もう30分ほども歩いているのです。
そもそもは3時間ほど前、みゃーこ先輩が繁華街に遊びに行ったことに端を発します。
財布の中身が空っぽだったみゃーこ先輩は、「酒など飲まなくても、夜のネオンが私を酔わせるの」などといっちょ前にひとりごちながら、ふらふらと繁華街を彷徨っていました。
2時間後、みゃーこ先輩は小さな飲み屋のテーブルで強面の男たちに囲まれていました。
「財布がねえなら体で払ってもらおうか」
はげ頭の大柄な男がみゃーこ先輩に顔を近づけて凄んできました。
みゃーこ先輩はその男の顔面に唾を吐き掛けました。
「へっ、てめえら童貞野郎どもに見せる安い体はあいにく持ち合わせてなくてね。そこら辺の風俗にでも行って、お姉ちゃんに拝み倒すんだね!」
ああ、さすがはみゃーこ先輩。彼女は頑強な男たちに屈することのない鉄の意思を持っているのです。
そもそも悪いのは無銭飲食をしたみゃー子先輩なのですが、そんなことを微塵も感じさせない胸のすく一幕でした。
しかし哀れ、みゃーこ先輩は目隠しをされて、どこか見知らぬ場所へと連れて行かれてしまったのです。
ながいながい道のりの後、いきなり目隠しをはずされたみゃーこ先輩は、あまりの眩しさに目を両手で覆いました。歩いている間に夜が明けてしまったのか、そんなに長い間歩いていたのかと思ったみゃーこ先輩でしたが、明るさに目が慣れてくるに連れ、どうやら今、自分を照らしているのが太陽の光ではないことに気がつきました。
これは・・・スポットライト・・・
そのことに気付いた瞬間、急に意識がはっきりとし、みゃーこ先輩は瞬時に自分が置かれた状況を把握しました。
自分は今、檻の中にいる。そして、自分の目の前には凶悪そうな男が目をぎらつかせて立っている。自分の隣にいるのは、居酒屋で自分を取り囲んでいた男たちの中の一人、耳に傷のあるうさぎだ!
「私は、人知れず行われている闇の武道会に参加することになってしまった!!!」
恐るべき状況把握能力です。
今まで無言だった耳に傷のあるうさぎが口を開きました。
「ケケケ、地獄の責め苦に泣き喚くがいい。命乞いをするなら今のうちだ・・・」
と言い終わるか言い終わらないかの内に、みゃーこ先輩はその拳で、目の前の3メートルはあろうかという凶悪な目つきの男をマットに沈めていたのでした。
悲鳴を出す間もないほどの一瞬の勝負でした。
「地獄を見るのはどっちだい?」
数日後、村のはずれにある森の中で、大量の死体が見つかりました。
ふしぎなことに、そのどれもが口元に微笑をたたえていたそうです。
つづく
by isoda8823
| 2010-03-30 11:09
| 絵物語
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