2006年 05月 07日
ふしぎ村のものがたり え:イーグル 文:スネーク
わたしたちが住んでいる町から、そう遠くない場所。
ここは、ふしぎ村。
ここには、夢を失った現代社会から弾き飛ばされた、メルヘンチックな生き物が住んでいます。
村は毎日がお祭り。
毎日がミュージカル。
毎日がサンバカーニバル。
毎日がラブ&ピース。
浮かれまくったメルヘンバカ共が、今日も愉快に暮らしています。
「まむーしまむし 毒蝮」
小洒落た歌を歌いながら、クマ君がやってきました。
「お花がいっぱい、きれいだな」
あらあら、クマ君、甘い花の蜜の匂いにつられてやってきたようです。
「まるで、ザギンのキャバクラみたいだな」
ザギンというのは、銀座のことです。
クマ君は、花を一輪つみとりました。
よからぬことを想像して、とてもいやらしい顔になっています。
そこへ、向こうのほう、くわしく言うと、大下さんの家の方向から、ウサギさんがやってきました。
「ウサギさん、おはよう」
クマ君があいさつをしましたが、ウサギさんは要領を得ません。
目はあらぬ方向を見たまま、焦点もさだまっていないようです。
「ウサギさん、おはよう」
「だぁだ、ぶぅう、やぁ」
もはや、言語の体をなしていません。
コミュニケーション不全という、現代社会の生み出した心の闇に飲み込まれているクマ君とウサギさんを、空の上から見守るものがありました。
「ぐもももも、おろかなり地上のいきものよ」
雲です。
今日はとても晴れたぽかぽか陽気なので、雲はおもしろくありません。
「ぐもももも、つまらんつまらん。雨もふらない。風もふかない。つまらない」
雲は怒りすぎておなかがすいてきました。
「ぐもももも・・・あのクマとウサギを食べてしまおうか。ぐもももも・・・」
雲の血ばしった目が、クマ君とウサギさんを狙っています。
太陽がそのようすを見ていましたが、雲に弱みをにぎられているので、見てみぬふりです。
ウサギさんがひげダンスを始めました。
あいかわらず、何かしゃべっているのですが、地球上の発音ではありません。
「いいかげんにしねぇと耳をちぎるぞ」
クマ君の呼びかけにも、ウサギさんは上のそら。
ウサギさんはかなり興奮しているらしく、手に持った、何かの気体が入っているらしいビニールぶくろを投げすてました。
ビニールぶくろは、そばにあった花にかかりました。
青いきれいな花でしたが、白い斑点(はんてん)が出てきました。
みゃー子先輩が飛んできました。
みゃー子先輩は、クマ君とウサギさんがそんけいする先輩です。
「ふたりは元気でやっているかな」
いやらしい顔をしているクマ君と、右目と左目が別の方向を見ているウサギさんを目の当たりにして、
「うん、いい感じ」
みゃー子先輩はわれ関せずといった顔で、空をぐるぐる回っていました。
うんめいの日まで、あと2年。
by isoda8823
| 2006-05-07 19:48
| 絵物語
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