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ゴジラ 60周年デジタル・リマスター版

『ゴジラ』60周年デジタルリマスター版(監督:本多猪四郎)

初ゴジはDVDだとか、CS放送時など、何年かに一度デジタルで鮮明になるのですが、それが一般の劇場、それもシネコンで上映となれば観に行かぬわけがないでしょう。
思い起こせば10年前、今は亡き倉敷東映の大スクリーンで観た「ゴジラ」は決して鮮明では無かったし音声もノイズだらけだったけど、鮮烈な映画体験でした。
それを凌駕する体験になったかというと、そうならなかった所が映画体験の面白さなわけです。
しかし今回は、また別の部分で、改めて『ゴジラ』という作品を発見する面白さに満ちていました。

確かに映像は鮮明になっておりました。ちょっとエッジが立ちすぎじゃないかと思う部分もありましたが。
この鮮明化に関しては、特に本編パートが顕著で、おかげで玉井正夫、石井長四郎ら最強成瀬組による素晴らしいショットを堪能させていただきました。

初ゴジと言えば、円谷英二の特撮や、反核反戦という部分がとかく取り上げられ評価される風潮にありますが、日本映画黄金時代の素晴らしいスタッフワークに支えられた作品としての評価ももっとされるべきではないかと思います。
あの河内桃子の可愛らしさは、本人の持っているものだけならず、成瀬組の撮影技術があってのものではないでしょうか。『浮雲』前後の、乗りに乗った成瀬組をスタッフに据えたところに、東宝がいかに今作に社運を賭けていたかわかります。

また、改めて円谷英二の技に感動しました。
ミニチュア特撮カットからの、絶妙なタイミングでの実景への切り替わりなど、編集マンとしての円谷英二の職人技でしょう。
そんな高い編集技術がありながら、そこに頼って細かくカットを割る(つまりうまくごまかす)のではなく、画の強度が高い1カットで見せ切りながら、あくまで必要最低限のカット数で抑えています。
そこでは、例えば操車場を襲うゴジラと逃げ惑う人々を捉えたカットに見られるように、合成が絶大な効果をあげています。特にマット画合成は、高圧鉄塔のシークエンスはもちろん、大戸島でもよくよく見ると背景がマット画だったりして、新発見でした。

今回のデジタルリマスターで初めてスクリーンを見る人たちにとって、これが強烈な映画体験になってくれれば、と思います。
by isoda8823 | 2014-06-18 03:00 | えいが道 | Comments(0)