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パシフィック・リム 主演:ロン・パールマン

『ゴジラ』(監督:本多猪四郎)のタイトル明け最初のカット、そして映画の終幕を飾るラストカットに何が写っていたか?と聞かれて答えられる人はだいたい観に行っているに違いない映画を観ました。


『パシフィック・リム』(監督:ギレルモ・デル・トロ)

因みにさっきの質問の答えは「海」。
タイトルが「環太平洋地域」を示し、海のカットで終わる今作が『ゴジラ』を初めとした日本の特撮怪獣映画の系譜に連なるものであることは間違いないと思います。最後にクレジットで本多猪四郎に献辞を捧げていることからも、制作者はそのことを自覚しているでしょう。

しかし、この映画のラストカットを飾るのは、実は海でもなければ怪獣でもなく、ロボットでもありません。
ロン・パールマン演じる闇の怪獣臓器売人、ハンニバル・チャウです。
この映画において最も重要なのは、このハンニバル・チャウという人物の創造ではないかと私は思います。
倒された怪獣を解体して臓器を売りさばき、その商売の独占権と引き換えに防衛軍に資金援助をする。汚い世界に生きる人物なのですが、単純に悪人と割り切れない魅力も持っています。
なにより、彼のおかげで怪獣を根絶する手がかりを得るわけです。

ラストカットは如何せん戯画的過ぎるきらいもあります(本当なら絶対溶けてる)が、日本の怪獣映画の影響下にある今作が独自に獲得したオリジナリティであるハンニバル・チャウが最後に登場することは、今作がオマージュではなく、一個の独立したオリジナルの作品であるという刻印でもありましょう。

リメイクでもなく、オタク村の内輪の自己満足的「どう、わかってるでしょ?」オマージュの集積でもない、21世紀の新しい怪獣映画が日本ではなく、1人のメキシコ人監督によりアメリカから生まれたという事実。
ここから、元祖である日本がどのような怪獣映画を生み出すべきか、なかなか頭が痛い問題です。

いや、この人なら絶対にすごいものを生み出せるという人たちはたくさんいると思うのですが、いざ、そういう作品を作るとなった段階で、果たしてその人たちに声がかかるのだろうか、という不安が。
by isoda8823 | 2013-08-21 18:20 | えいが道 | Comments(0)