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ふしぎ村の物語 その6 絵:イーグル 話:スネーク

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30年が経ちました。

「皆殺しマギー」の異名をとったみゃーこ先輩も、いまでは立派なセレブマダム。
今日も最新のセレブファッションに身を包んで出勤です。
現在、みゃーこマダムはアパレルブランド「アニマルマニフェスト」の経営者として辣腕を奮っています。年商580億円を稼ぐ現代の錬金術師も、出勤は徒歩。セレブ然としていない庶民的な性格が、彼女を村の人気者にしています。

しかし……

最近、彼女の周りに不穏な空気が漂っているのです。
彼女自身も、そのことには気付いていました。いや、気付かざるを得ないような事件が身辺で頻発していたのです。
台所のお玉がよく盗まれる、ドアノブに溶けたグミがまとわりついている、録画したテレビ番組のラスト15分が入っていないなど、数えだしたら枚挙に暇がありません。
背筋に寒いものを感じているみゃーこマダムですが、仕事はそれ以上に多忙です。
「どうにかしないと」と思いながらも、日々の生活で精一杯になってしまっていました。

そんなある日の晩……

もう日付も変わろうかという時間に帰宅したみゃーこマダムは、そのままベッドに飛び込み、眠りに就きました。1日の疲労が溜まっていたのでしょう、一気に眠りの世界に引き込まれた彼女は周囲の騒がしさにも気付かず寝入っていました。

みゃーこマダムは夢の中で、りんご飴を食べながらラインダンスを踊り、太鼓を叩きながら岡本信人と野草の話をしていました。ばってん荒川も傍にいました。
岡本信人の野草の話はたいそう面白く、「あんな野草もてんぷらにすると美味いのか」とかいろんなことをマダムは言いました。
そして、ちょうどダニエル・カールがまさかの大阪弁で喋った辺りで、みゃーこマダムはいきなり洪水に飲み込まれました。

「あぷっぷっぷ!」
目を覚ましたみゃーこマダムは驚きました。顔がびしょ濡れなのです。
マダムは頭を整理しました。どうやら、顔に水を掛けられたらしい。目の前にいる黒ずくめの男がコップを持っている。おそらく、黒ずくめの男がコップに入れた水を私に掛けた。
黒ずくめの男。誰だこいつは!!
と考えている間に、マダムは黒ずくめの男に促され、寝室を出て行きました。
廊下をゆっくり歩きながら、マダムは思いました。
「犯罪に巻き込まれている!!」
しかし、抵抗すれば、それこそ何をされるかわかりません。促されるままに廊下を進み、リビングの方に向かいました。普段なら、寝室からリビングまで1分も掛からないはずなのに、今日はなんだか1時間も2時間も廊下を歩いているような気分になります。真っ暗な廊下に響くギィギィという足音がとても重苦しく、気がつけばマダムの顔は汗まみれになっていました。

1歩、2歩とリビングのドアに近づいていきます。
闇の中を探るように伸ばしていたマダムの手が、ついにリビングのドアノブに触れました。
バチィッ!!
「うぎゃおお!」
強烈な静電気のため、マダムは思わず今まであげたことのない悲鳴を上げてしまいました。
黒づくめの男は何もなかったかのようにマダムを促します。
一体リビングで何が待っているのか…マダムは意を決し、ドアを勢いよくあけました。

突如、マダムの目の前が真っ白になり、耳を劈く轟音が襲ってきました。
マダムはとっさに伏せて、目と耳を覆いました。爆弾でも爆発したんじゃないかと思ったのです。
しかし、ゆっくりと顔を上げたマダムの前にあったのは、廃墟と化した我が家ではなく、大きな大きなケーキでした。いつの間にか、マダムの周りには雲さんや太陽さん、クマさんやウサギさん、森本さんがニコニコしながら立っています。
「みゃーこ先輩、還暦おめでとう!!」
まだ呆気にとられているみゃーこマダムの背後には、黒い頭巾を手に持ったタンチョウヅルさんがこれまた笑顔で立っていました。

全部、誕生日を迎えたマダムを驚かすための粋な計らいだったのです。
やっと何もかも悟ったマダムは一気に気が抜けたのか、その場にへたり込んでしまいました。
「心臓が止まるかと思ったわ」
「ごめんなさい、でも、なかなか上手かったでしょ、私の芝居」
タンチョウヅルさんは舌をペロリと出しておどけて見せました。
「でも、台所のお玉を盗んだり、ドアノブに溶けたグミをつけたのは」
「ああ、あれはただの嫌がらせです」
みんな口々に「大変だったよな」とか言い合いました。

そのあと、みんなでケーキを食べたりしましたが、あまり状態の良くないケーキだったので、翌日みんな黄金に光るものを口から吐き出したりしたのでした。
Commented by ひょーご at 2011-03-02 12:17 x
新作キターーーー!

黄金に光るものw
by isoda8823 | 2011-03-01 15:29 | 絵物語 | Comments(1)